内申点と通知表、一見同じ意味合いと捉えられがちですが、これらの評価の違いは何でしょうか。
どちらも生徒の成績の記録には間違いありませんが、この2つの評価は、記録する目的が異なるのです。
「内申点」は、中学校入学以後によく耳にするようになるかと思いますが、小学校時代から馴染みがあるのが「通知表」ではないでしょうか。
では、内申点と通知表の違いについて、解説していきたいと思います。
内申点と通知表の違いとは?
内申点と通知表の違いとはどのような点でしょうか。
まず、1番の大きな違いは、届け先が異なることです。
内申点が記載された「内申書」
これから自分が通おうとする新しい学校、つまり受験先の高校への提出物
「通知表」
その学校に通う生徒個人へ手渡すもの
内申点が記載された「内申書」の中身は?
内申点とは、各教科の評定を各都道府県が定めた計算方法で点数化したもので、これが記載された調査書を「内申書」といいます。
「内申書」は、正式には「調査書」と呼ばれ、各教科の成績をはじめ、学級・生徒会の委員経験や学校行事での活動状況、部活動や学校内外での活動実績、出欠日数など、学校生活全般について記録されています。
高校受験においては、合否を判定する際の重要な資料で、出願時に必要な書類のひとつとなっています。
高校入試は、受験当日の学力検査点と「内申点」の両方で合否が決まるため、できるだけ高い内申点を取っておくのが有利です。
高校入試の合否判定においては、内申点が重視される割合や、どのように活用されるのか、対象となる学年など、都道府県ごとに異なっているため、中3になってから頑張るつもりでいると手遅れになってしまう場合もあります!
日頃から、内申点のチェックを心がけておいて下さいね。
・内申点には何年生の成績が含まれるのか
・実技4教科の内申点は5教科(国・数・理・英・社)よりも重視されるのか
・各教科の評定以外の項目は点数化されるのか など
内申点の重要性や上げ方のポイントについては、以下の記事も是非ご参考に!
「通知表」の中身は?
「通知表」は、親世代にとっては、夏休み・冬休み・学年終了時にもらうもの、としての認識が強いのではないでしょうか。
「通知表」とは、現在通っている学校での生徒個人の成績などを記録したものです。
では、実際の通知票の記載内容を見てみましょう。
小学校と中学校では、記載されている内容は異なりますが、通知表に記載されている項目は、おおよそ以下のようになっています。
- 学習の記録(観点別評価、評定)
- 特別の教科 道徳
- 外国語活動の記録
- 総合的な学習の時間の記録
- 特別活動の記録(学級活動、委員会、クラブ活動、学校行事など)
- 行動の記録
- 総合所見
- 出欠の記録
『行動の記録「基本的な生活習慣」について』
小学校1・2学年
安全に気をつけ、時間を守り、物を大切にし、気持ちのよいあいさつを行い、規則正しい生活をする
小学校3・4学年
安全に努め、物や時間を有効に使い、礼儀正しく節度のある生活をする
小学校5・6学年
自他の安全に努め、礼儀正しく行動し、節度を守り節制に心掛ける
中学校
自他の安全に努め、礼儀正しく節度を守り節制に心掛け調和のある生活をする
実際の通知表には、もっと具体的でわかりやすい言葉で記されているかと思います。
学年が上がるごとに、書き方が変わっていくことにも注目してみて下さいね。
また、生徒個人の成績は、担当する複数の先生が項目ごとに評価して、生徒一人ひとりのために成績表に記載を行います。
最終的には担任が他の先生の意見をまとめ上げて、生徒の優れている点や、今後の課題などについても記載をしています。
「通知票」は、先生が保護者に対して子どもの様子を知らせるもの、つまり「連絡帳」と同じ役割を担っているといえますね。
子どもの学習面や生活面の改善のための資料でもあり、次学期(次学年)に向けて、さらに努力や継続を促すものでもあります。
学校側は、通知表を介して、保護者に子どもの現状を知ってもらいたいと考えています。
そして、保護者の協力を得ながら、子どもを見守っていこうとしているのです。
通知表を受け取ったら、親子で「今後、これをどう活用していくのか」、話し合ってみることが大切ですね。
以上、内申点と通知表の違いについての解説でした。
では続いて、通知表はどう見ていくべきか考えていきましょう。
どう見ていくべき?通知表の基礎知識!
通知表はどう見ていくべきなのでしょうか。
一般的に、小中学校では学期末に通知表が配布されています。
学校や学年にもよりますが、小学校は3段階や5段階、中学校は5段階や10段階で示されることが多いですね。
親も子どもも「5が何個増えた(減った)」と一喜一憂していることが多いと思いますが、一般的な通知表の評価は、ある教科のその期間の学習状況を示しているに過ぎません。
たとえば、小3の算数の場合では、1学期に九九の復習、時間、長さ、大きな数、2桁の割り算などを学習しますが、通知表の評価は、1学期の総合評価が数値として表されているのです。
もし、1学期の算数の評価が3段階の「3」であったとしても、「大きな数」に関しては理解が不十分、ということもあり得ます。
また、通知表の成績のつけ方は、現行の学習指導要領に変わった2002年、「相対評価」から「絶対評価」へと変更されました。
これにより、以前の評価では、3段階の「3」や5段階の「5」がつく生徒数は一定に限られていたところ、絶対評価に変わったことによって、基準を満たせば何人でも最高評価がもらえるようになりました。
保護者世代と今の子どもでは、通知表そのものの在り方が異なっているのです。
通知表のつけ方や評価の仕組みとは?
では、実際にどのように先生が評価を決めているのか、仕組みを説明していきましょう。
中学生の場合
成績をつける際の規準は細かく決められています。
特に、中学校における成績は、そのまま高校受験の合否判定にも大きく関わるため、細かく基準が設けられています。
なぜなら、きちんと外部に対して説明できる形でないと、公平でなくなってしまうからです。
また、教科による違いはありますが、同じ教科の中では、必ず同じ規準で評価を行います。
例えば、ひとつの学年に英語の授業を3人の教員で担当している場合は、事前に3人で評価規準について詳細まで詰めて、平等に成績がつくようになっています。
小学生の場合
小学校における成績は、中学校ほど試験の合否に影響しませんが、中学校同様、きちんと説明することができるように基準が定められています。
先述した小学校3年生の算数で説明すると・・・
例えば、その学期に「九九の復習」「時間」「長さ」「大きな数」「2桁の割り算」の5単元を学習したとします。
算数の場合、評価の観点は以下の4つです。
- 「算数への関心・意欲・態度」
- 「数学的な考え方」
- 「数量や図形についての技能」
- 「数量や図形についての知識・理解」
それぞれの単元ごとに、この4つの観点における数値(テストの点数など)を定め、最終的にそれらの平均を出していきます。
「関心・意欲・態度」の観点から評価されるもの
・宿題や課題などの提出状況
・学習態度や授業における積極性 など
テストの点数だけでなく、提出物や普段の授業の様子なども数値化されています。
「関心・意欲・態度」の評価では、特に提出物を「出したか出さなかったか」が、はっきりと出ますから、親から評価に関する説明を求められた際にも「提出物の状態が10回のうち3回出ていないため、そういった評価になりました」と回答することができます。
締切りにルーズだと、社会に出てから信用されない人になってしまいますから、提出物の期日を守る、時間厳守など、子どもの頃から習慣づけさせたいですね。
通知表は、そういった生活態度の見直しなどをはかるきっかけを得ることもできるのです。
以上、通知表はどう見ていきべきかについてでした。
最後に、通知表よりも大切な「学期末のまとめテスト」について解説していきましょう。
実は通知表よりも大切!「まとめのテスト」を活用!
子どもの学習状況を把握することができるものは、通知表が1番!とお考えではありませんか?
実は、通知表より大切なのは、学期末・学年末という区切りに実施される「まとめテスト」です!
「小学生」
・学期末のまとめのテスト
・学力経年テスト など
「中学生」
・学力診断テスト
・外部模試
・実力テスト(中3) など
これらは、その学期・学年に取り組んだ内容を全て網羅するように作られていますから、その結果を見れば、子どもの理解状況がよくわかります。
特に、算数・数学は積み重ねが大切な教科ですので、もし十分に理解ができていない単元があれば、新学期・新学年を迎えるまでにしっかりと対応することが望ましいでしょう。
通知表の評価だけでは、大まかな出来・不出来しかわかりませんから、理解が不十分な箇所を把握できていないこともあるでしょう。
そういった場合に活用でき、次への学習のステップにつながるのが「まとめのテスト」の結果なのです。
「まとめのテスト」の結果はこう読み解く!
「まとめのテスト」は、子どもの理解度を把握するために重要な役割を果たします。
再度、小学校3年生を例に挙げますが・・・
1学期に「九九の復習」「時間」「長さ」「大きな数」「2桁の割り算」などに取り組みます。
例えば、まとめのテストにおいて、配点が各20点ずつ、100点満点だったとします。
では、このテストの点数が85点だったとしましょう。
点数だけに着目すると、決して悪い点数ではありませんから、問題なく理解できているように思われるでしょう。
しかし、同じ85点でも、得点の組合せにはいくつかのパターンがありますよね。
Aくん
・九九の復習:20点
・時間:15点
・長さ:15点
・大きな数:15点
・2桁の割り算:20点
Bさん
・九九の復習:20点
・時間:20点
・長さ:20点
・大きな数:5点
・2桁の割り算:20点
・・・いかがでしょうか。
この場合、問題があるのはどちらでしょう。
実は、後者の方が問題アリです!
同じ「85点」でも、明らかに後者の場合は、「大きな数」の理解が不十分だということが予想されますよね。
このように、つまづいている単元を把握できのが「まとめのテスト」なのです。
このケースでは、おそらく通知表では前者も後者も同じような評価になるはずです。
しかし、「まとめのテスト」では、通知表だけでは見つけられない子どもの弱点を見つけることができるのです。
そうやって見つけた子どもの課題は、夏休みなどの長期休みを使ってリカバーしておきましょう。
繰り返しになりますが、特に算数・数学は積重ねが大切な教科です。
理解が足りていない部分をケアすることこそが、その後の着実な学びへとつながります!
それぞれの子どもに対し、理解が不十分な単元を個別の課題として与えてあげられれば、子どもの苦手退治ができるかもしれませんね。
つまり、学期末・学年末に必要なものは、通知表だけではないということになりますね。
通知表だけで判断しないで!子どもを伸ばすための親の心得とは?
子どもが通知表を持って帰ってきたら、どのように声をかけていますか。
できれば、子どもに声かける際は、結果だけを見ないで、「過程」に注目して声をかけてあげてください。
良い結果(「5」が増えた、「2」がなくなったなど)という時もあれば、悪い結果(「5」が減った」、「2」がついたなど」という時もあります。
大切なことは「結果」ではなく「過程」なのだと思います。
「行動」と「良い結果」の関係に気づかせる!
良い結果の時には、本人が色々と努力をしたのかもしれません。
保護者が声をかけるなら、そのような「努力の部分」を評価するとよいでしょう。
「テストで間違えたところをきちんと復習したからだね!」
親からの褒め言葉やポジティブな声掛けは、子どもの中で「きちんと取り組んだことや努力したこと」と「良かった結果」とを結びつける役割を果たします。
もちろん、きちんと取り組んだり努力したりしたからといって、毎回うまくいくわけではありません。
すぐに結果に結びつかないこともあるでしょう。
しかし、「自分の努力」と「良い結果」が結びつく経験を何度も得た子どもは、「過程」の大切さを学んでいくことができるのです。
良い点数で「お小遣い」などは逆効果!
「結果」のみに焦点を当ててしまうと、極論、「良い結果であればズルをしてもよい」ということになってしまうかもしれません。
そういった意味でも、「テストで100点を取ったら1000円あげる」など、良い結果とご褒美を結びつける方法はお勧めしません。
一時的な意欲の向上にはなりますが、中長期的に見ると「意欲の維持」には繋がらないでしょう。
そもそも、その「モノで釣る」ような仕組みを途中でやめた途端、逆に子どもの意欲は大きく低下しまうというリスクがあります。
そういったことよりも、学びの意味は「自分の能力を高めること」「選択肢を増やすこと」「社会貢献すること」などにあります。
報酬で結果を導くより、子どもの頃から「学びの大切さ」を伝えている家庭のほうが、より良い育ちにつながるのだと思います。
なお、この「モノで釣る」教育方法については、アメリカで行われた有名な社会実験がありますのでご紹介したいと思います。
『子どもの読書量を増やそうと試み、子どもが本を1冊読むごとに一定のお小遣いをあげる、というシステムを設定したのだそうです。
実際にやってみると、確かに子どもの読む本の数は増えました。
しかし、子どもたちは冊数を稼ごうとするあまり、薄い本や簡単な本を読むようになり、その上、その取り組みをやめた途端、本をあまり読まなくなるという残念な結果となったそうです。』
「通知表」を子どもの未来につなげよう!
通知表の結果が悪かった場合、その結果を見て、親が真っ赤な顔で怒ってもあまり意味はないかもしれません。
それよりも、「過程」に目を向け、「何が悪かったのだろうね?」と、子どもと一緒に問題点を見つけられる雰囲気だと良いですね。
親から見て、もしも正しい答えがわかっていたとしても、「あなたの〇〇が悪かったのよ!」とは言わず、子どもが自分で考え、気づくことができるような状況にしてあげたいですね。
そして、子どもが見つけた問題点は、次の学期での課題としてクリアできるよう、子どもを応援してあげて下さい。
親がフォローできることはたくさんあります!
そして、次の学期末に課題をクリアし、成績が上がった際には、「結果」以上に「過程」を褒めてあげて下さいね。